算数教育に於ける教条主義の克服(4)
5. 発見学習では、<特殊→一般>方式の方がよい場合がある。
ここでも、まずわたしの実践を示そう。新しい指導要領では6年の教材となった対称図形の指導である。わたしは「線対称図形の対応する二点を結ぶ直線は、対称軸で垂直に二等分される」ということを発見させるために、つぎのように指導した。
わたしは、かえでの葉を素材に、下の図のイ、ロ、ハ、---の順に、その対応する点の見つけ方を話し合わせた。
子どもたちは、イ、ロの対応点は、まさに直観的に、直観だけをたよりにその対応点イ‘、ロ’をみつけた。
ハの対応点は、イの対応点をよりどころに
C「イから3つ目のギザギザのところだから、こちらもイ‘から3つめのギザギザのところです。」
と多少の論理を働かせて見つけた。
ニの対応点では、ハの方法の他に
F「ぼくはみんなとちがって、対称の軸に垂直に定規をあててもいいと思います。」
という考えを発表した。そして、その方法が次のホの対応点を見つける場合、すばらしい威力を発揮することが確認された。こうして、最後に一般的な位置にある点ヘをとりあげ、その対応点の見つけ方を考えさせた。
T「それでは、今度はこの×印ヘの対応する点をみつけてもらいましょう。」
Cm「はい、はい。」
T「まちがいなく、みつかりますか。」
Cm「絶対、大丈夫。」
O「あのね、Fさんが言ったようにね、ここに三角定規をあててね、それから線をひいてね---こうして線をひくでしょ。でもね、線をひいてもどこだかわからないでしょ。それでね、三角定規にしるしをつけといてね、こうしてやればいい。」
G「Oさんは三角定規にしるしをつけるといったけど、長さを測ればいいよ。」
I「コンパスを使ってね---対称の軸のところから×印のところまでひらいてね、反対がわにこうしてしるしをつければいいです。」
Cm「そう、そう。」
子どもたちは、こうして直線について対照な図形の対応する点の一般的な求め方をみいだした。子どもたちは<特殊→一般>方式によって、特殊な場合を足がかりに、より一般的な場合についても自分たちの力で解決し、一般的な数理を見いだしたのである。
(つづく)
( 掲載雑誌は不明。1980年代の掲載と思われる)