算数の学びと指導ー市原式

唯物弁証法の視点から算数教育を見直した小学校教師の著作集

定着を確かにする練習の方法(2)

2. 視聴覚的方法に訴える

 定着を確かにする場合、視聴覚に訴えると効果があることは、よく知られている。

 1年の10までのたしざん・ひきざんの指導では、ドット・カードを利用して効果をあげることができる。

 まず、1から10までのドット・カードを利用して、数詞と数字と数図(ドット・カード)との強固な連合をつくりあげることがたいせつである。

 4までの直観数の範囲だけでなく、それ以上の直観数を越える数についても、瞬間的に数が言えるようにすることである。

 そして、その上で2+2とか6+2、4+3なども、数式とドットを結合させるようにする。カードの表には、数字で6+2、4+3などと書き、裏には下図のように赤いドットで被加数を、青いドットで加数を書いてその結合を図り、表を見て答えさせ、すぐ裏返して確かめさせるとよい。

 具体操作と記号操作の間に視覚的な映像をとり入れ、それが橋渡しとしての効果をあげ得るわけである。

 学習心理学では、このような橋渡しを媒介といい、心像による媒介の効果を述べている。

 なお、ここで聴暗算の効用について述べておきたい。

 

 聴暗算は、数字によらない数詞によって数が示されるため、注意を集中していないとできない。それだけでなく、数を念頭に把握する必要から復誦(暗誦ともいう)効果を生み、定着に役立つ。ただし、練習は短時間でないと疲れが大きく、逆効果になるから注意を要する。

(つづく)

 

(1980年代の掲載。掲載雑誌は不明。特集 認識と定着から)