定着を確かにする練習の方法(5)
5. 集中法と分散法について
集中法というのは、休憩を入れないで連続的に練習する方法であり、分散法というのは練習のあいだに休憩を入れてする方法である。
学習心理学では、一般的には分散法が有利といわれているが、集中法がよい場合もあり、最近では条件分析にすすんでいる。
たしかに、中途半端なこま切れ学習は、よくないという批判がある。
しかし、一定の技能を身につけるには、毎日、5分ないし10分程度、分散的に練習を積み重ねることは、定着を確かにする上で、大変効果的である。その場合、定着させたい内容に焦点を合わせ、他の要素はできるだけ抵抗が少ないように配慮する。
例えば、小数のかけ算を教えているときは、
22.3×0.3 3.21×0.2
0.08×0.06 0.05×0.4
といった問題を出して、数値計算そのものは暗算で簡単に求められるものにし、小数点の位置だけ注目すればよい。
三角形の面積を求める公式を定着させる場合なども同じである。
6. 誤りを定着させないために
一度、定着した誤りを正すことは、大変な労力を必要とする。したがって、練習の初期においては、速さより正確さに重点をおいて指導することが大切である。数字の筆順にしても、誤って憶えてしまうとなかなか直させるのに苦労する。かけざん九九でも同じである。
かけざん九九を憶えさせる場合、こまかいステップを組んで練習させステップごとに誤って憶えないように点検を何度も繰り返したい。
①かけざん九九の表をみて、正しく九九が唱えられるようにする。
②かけられる数(被乗数)を鉛筆などでかくして正しく唱える。
③かける数(乗数)をかくして唱える。
④答えの1の位をかくして唱える。
⑤答えを全部かくして唱える。
⑥表を見ないで順に唱える。
⑦表を見ないで反対から唱える。
このような方法は、ステップがこまかいこともあって、少しの努力で一つ一つのステップが越えられ、子どもたちはよろこんで挑戦する。そして、繰り返し点検もでき、かけざん九九を確実に身につけさせることができる。
なお、誤りでなくても、指で計算したり、数え足すといった望ましくない方法を定着させてしまうこともある。子どもの中には、10までの加法・減法は、それで結構速く計算でき、何の不都合も感じない者もいる。
しかし、指で計算したり、数え足す方法では、数を心の目で処理しないで肉眼で見なければ処理できないということになってしまう。これでは発展性がない。
したがって、“定着を確かにする”という場合、何を定着させるか十分検討してみる必要がある。
(おわり)
(1980年代の掲載。掲載雑誌は不明。特集 認識と定着から)