算数の学びと指導ー市原式

唯物弁証法の視点から算数教育を見直した小学校教師の著作集

さんすう すらすら(4)

Ⅳ. 合成と分解

—数あて遊びを使って—

 

1. すぐわかって退屈

 1年生の1学期に、数の合成・分解の指導があります。たとえば6は1と5、2と4、3と3、---にわけられるとか、1と5で6、2と4で6、3と3で6、---というように、一つの数を二つの数の和とみて、分解したり、合成したりする指導です。

 ある教科書では、6の合成・分解を指導するために赤い花と白い花をならべ、たとえば赤い花5個と白い花1個、赤い花4個と白い花2個、赤い花3個と白い花3個---というようにかきわけて、6が5と1、4と2、3と3---からできていることを指導するようになっています。

 さて、この教科書で実際に指導する場合、教科書の図を見せて「6は、いくつといくつにわけられますか」「いくつといくつで6になるでしょう」と問いかけることになります。この指導では、子どもたちは、図をみれば簡単に答えがわかるので興味がわかず、すぐ退屈してしまいます。

 

2. 赤いあめと黄色いあめ

 私は6の合成・分解を指導するのに、赤い紙で包んだあめ玉4個と黄色の紙で包んだあめ玉2個をを袋に入れておいて「この袋のなかに赤いあめと黄色のあめがはいっています。あめはみんなで6個です。赤いあめはなん個で、黄色いあめはなん個かあててごらん」と問いかけました。

 こどもたちは、頭のなかであめ玉を想像しながら「赤いのも、黄色いのも3個です」「私は赤いのが5個で、黄色いのが1個だと思います」ぼくは赤いあめが4個で黄色いあめが3個だと思うよ」「おかしいよ、赤いあめが4個で、黄色いあめが3個だったらみんなで7個になるよ」「−−−」こたえたり、話し合ったりします。

 こどもたちは、いろいろと考えて答えます。それをこどもたちには、赤と黄のおはじきで机の上にならべさせ、私はチョークで色わけしながら、みんな板書しました。そして、どれも6になることをこどもたちといっしょにたしかめてから、数字で「6はと5」「2と4」「3と3」---からできていることをしめします。

 こうしてから、私は「さあ、どれがあっているかな」といって、袋のなかのあめを1つずつ、おもむろに出してみせました。こどもたちは目をかがやかせ、かたずをのんで、出てくるあめをみつめていました。

「うわい あっていた」「ざんねん」と大喜びです。

こどもたちは

「もう一度あてさせて」

とくりかえし要求しました。

 そしてその時間の終わりには、6が0と6,1と5,2と4,3と3、4と2,5と1、6と0からできていることをそらでいえるよう、くりかえし、くりかえし練習もしました。

 

3. 能動的なことが好き

 つぎの日は7の合成・分解です。

 こんどは、赤と青の色棒を箱のなかに10本ずつ入れておいて、小さい穴から7本とり出し、赤がなん本、青がなん本でてくるかをあてるあそびです。この日も、こどもたちは、大喜びで学習しました。

 こどもたちは能動的なことが好きなのです。自分の頭で考えるということが、とても楽しいのです。

 最近、こどもたちの実態にあわない過重な教材量を消化しなければならないために、現場教師はついに心にあせりをいだいて、こどもたちの積極性をひき出さず、詰め込み主義に走りがちですが、それではますます“算数ぎらい”の子をふやすだけだと思います。

(つづく)

 

新聞「赤旗」に掲載。掲載時期は不詳。1980年代と思われる。