算数の学びと指導ー市原式

唯物弁証法の視点から算数教育を見直した小学校教師の著作集

2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

算数教育に於ける弁証法の問題(1)

原子物理学者、坂田昌一氏は、その著“新しい自然観”の中で、 「自然界には質的に異なった多くの階層が存在し、それぞれの階層では、それに固有な法則が支配している。」と述べている。 これと同じことが、算数教育でもいえると思う。勿論、自然界の階層とは…

さんすう すらすら(9)

Ⅸ. 算数と生活 —のびのびとした思考力— 1. 大西式の計算法 わたしのクラスに大西という子がいました。2年生のとき、26+39というくり上がりのある計算を教えていたときこんなことがありました。 「先生26+39はくり上がりなしでもけいさんできるよ…

さんすう すらすら(8)

Ⅷ. 差とのこり —まんじゅうの食べかた— いま、日本の教科書は、ほとんどが減加法で指導することになっています(前回参照)。しかし、私は、減々法で指導するほうがよいと思います。 1. 残りを求める問題 第1の理由は、素材の面からです。減加法がよいのは…

さんすう すらすら(7)

Ⅶ. 減加法と減々法の使いわけ 1. 1年生からくり下がり 以前は、2年生でしたが、いまは1年生で12ー3、13ー6といった10いくつの数から基数をひいて、基数が残るいわゆるしり下がりの計算が出てきます。 この計算の方法には、数えひく方法、加法の…

さんすう すらすら(6)

Ⅵ. くりあがり計算 —集中的な経験でおぼえる— 1. ピンとこない わたしがまだ教壇に立って間もないころです。8+6といった基数に基数をたして10いくつになるくり上がりの計算を指導しました。“にわとりが きのう たまごを8こ うみました。きょう また …

さんすう すらすら(5)

Ⅴ. 具体と抽象 —みえないものを心に描く— わたしが1年生を担任していたとき、黒板いっぱいに大きな木と岩、草むらの絵をかき、「よしおくんたちは、かくれんぼをしました。7人かくれました。4人みつけました。まだなん人かくれていますか」とたずねました…

さんすう すらすら(4)

Ⅳ. 合成と分解 —数あて遊びを使って— 1. すぐわかって退屈 1年生の1学期に、数の合成・分解の指導があります。たとえば6は1と5、2と4、3と3、---にわけられるとか、1と5で6、2と4で6、3と3で6、---というように、一つの数を二つの数の和…

さんすう すらすら(3)

Ⅲ. 数字を教える —“ドット”を使って— 1. 1から10まで一挙に 1年生の算数の教科書を調べてみると、数字が出てくるのは、どれも4月の下旬か5月になってからです。学校ではどんな勉強をするのだろうかと大きな期待をもって入学したこどもたちは、なかな…

さんすう すらすら(2)

Ⅱ. 数の観念 —生活のなかで数える— 1. 教えんでもわかる 1年生に入学したT君は、とても算数に強い子でした。 入学してまだ間もない入門期のころ、学校めぐりのなかでみてきた庭のチューリップを赤いチューリップと黄色のチューリップになかまわけして、ど…

さんすう すらすら(1)

Ⅰ. 算数ぎらい —新幹線なみのスピード— 1. 教室のスナップ 私の授業をこどもの作文で紹介しましょう。 “きょうは、2時間目に算数がありました。チャイムがなって少ししてから先生が、にこにこしながらはいってきました。わたしは「きょうも、おもしろい授…