算数の学びと指導ー市原式

唯物弁証法の視点から算数教育を見直した小学校教師の著作集

2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

酋長の算数(1)

数学というと、もう頭からむずかしいもの、頭が痛くなるものと、思い込んでおられる方が多いと思います。たしかに数学はそうした一面を具えています。しかし本当に数学は、むずかしく面白くないものでしょうか。 一方、数学は大変重視されています。それは、…

子どもの論理(12)

Ⅱ. 除法の形式についても、全く同じことがいえる。除法の形式には、つぎの短除法形式(A)と長除法形式(B)とがある。 ただし、短除法は除数が一位数の場合に限られた計算形式であり、長除法にはその制限がない。 さて、最近では、最初から長除法形式で指導…

子どもの論理(11)

数えたし、数えひく形式に代わって、念頭による暗算形式がとり入れられると、子どもたちの計算能力は急速に発達する。それは暗算形式が、数えたし数えひく形式に比べて、20+30、43+26といった計算内容に正しく照応しているからである。 43+26…

子どもの論理(10)

6. 子どもは、現実的に考える Ⅰ. 今から十年も前の話である。当時は、加法九九、減法九九を指導したら、直ちに筆算を指導することが常識になっていた。 筆算で計算すれば、どんな大きな数でも位取りの原理にささえられて、桁ごとに機械的に計算していけば、…

子どもの論理(9)

それから10年後の今年、再び5年生の子どもを担任して、わたしはこの5月また0を処理するかけ算の指導をした。 “つぎのかけざんを、暗算でしましょう。” といって、わたしは黒板に 30×2 とかいた。子どもたちは、”こんなの、わけない“といった様子で一…

子どもの論理(8)

5. 子どもは、帰納的に考える。 わたしが、教壇に立ってまもない頃の経験である。 3600×4といったかけ算で、0を処理して計算する方法を指導したことがある。 “3600円は100円ざつで何枚ありますか。“ ”36枚です。“ “そうですね、そうすると、…

子どもの論理(7)

さて、いろいろなものの数を心象によってとらえることが、抽象数による計算への橋渡しになる理由を考えてみよう。 その理由は、いろいろ考えられるであろうが、1つはそれらの具体物がもつ色とか形とか位置を自由に変形させたり、簡素化したり捨象したりする…

子どもの論理(6)

4. 子どもは、具体的に考える 30+20、50−15---が、わからなくても、これをおかねで考えさせると、わけなく計算する子どもがいる。これは誰もが知っていることである。 わたしが1年生を担任していたとき、図のような情景を黒板にかいて “よしおく…

子どもの論理(5)

異分母分数の大小を指導しているときであった。 下の問題で と導いたとたん、Sが立って答えた。 “先生、わかった。分母も分子も小さい方が大きくなるのやね。” わたしは、全くがっかりした。 Sは、たまたまそのときの分数が分母・分子ともに小さい方が、大き…

子どもの論理(4)

3. 子どもは、経験から考える 5年生で、小数の乗除を一通り指導した直後 ”125÷0.75の答えは、125よりも大きくなると思うか、小さくなると思うか。“ とたずねてみた。 その結果、48人中26人は125より小さくなると答え、22人が125より…

子どもの論理(3)

この9月15日に行われた岐阜県算数教育研究会の大垣市興文小学校の授業では、つぎの問題で指導してみた。 ”1㎗45円のサラダ油、3.3㎗のねだんは、何円になるでしょうか。“ 子どもたちは、1㎗45円のサラダ油、3.3㎗のねだんがおよそ45円の3倍…

子どもの論理(2)

2. 子どもは、すなおに考える。 5年生の5月だった。 わたしは、整数かける小数の計算を指導しようとして “1ℓが65円のすを、0.3ℓ買います。何円になるでしょうか。” という問題を黒板にかいた。 やがて、子どもたちのノートには とかかれた。そして ”…

子どもの論理(1)

1. 子どもの論理 下のような問題で、 (整数)÷(小数)の計算を指導しているときであった。 “先生、ちょっとおかしいことがある。” と、突然Nが立ちあがった。 “先生、240×4.8のときは、240を10で割って24として、4.8を10倍して48として…

計算力向上の問題点と対策(2)

さて、もう一つの点は、従来の計算指導が、数と計算との関係を発展的にとらえないで、静的・形式的にとらえ、数範囲を10までに限って、その中でこうした計算に習熟させようとしたことである。実際、子供たちにとって10までの数範囲の計算では、何も念頭…