算数の学びと指導ー市原式

唯物弁証法の視点から算数教育を見直した小学校教師の著作集

2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

定着を確かにする練習の方法(3)

3. 合理的な型分け—群化の方法— 定着を確かにする上で、同じ型のものをまとめて練習することは効果的である。従来から、計算指導では、この型分けによる方法がとられている。 ところが、1年の10までのたしざん・ひきざんでは、10までの数の合成・分解…

定着を確かにする練習の方法(2)

2. 視聴覚的方法に訴える 定着を確かにする場合、視聴覚に訴えると効果があることは、よく知られている。 1年の10までのたしざん・ひきざんの指導では、ドット・カードを利用して効果をあげることができる。 まず、1から10までのドット・カードを利用…

定着を確かにする練習の方法(1)

1. はじめに —認識と定着とのかかわり— “定着を確かにする練習の方法”といっても、やはり、認識とのかかわりを無視することはできない。 学習心理学でも、理解学習と暗記学習では、理解学習の方が把握・定着がよいことは定説になっている。また、同じ理解学…

つまずきの診断と解消ー1年・計算分野(2)

3. つまずき・おくれの解消 さて、誤った理解・理解不足に基づく“つまずき”に対しては、個人カルテに基づいて、個別に指導することが大切である。その場合、形式的理解を急がず基本にもどって具体的事実と結びつけて理解させること。たとえば4+50を90…

つまずきの診断と解消ー1年・計算分野(1)

1. つまずき・おくれを累積させないために つまずき・おくれの診断と解消は、指導の過程でその都度行われるべきであって、学年の終わりになって、まとめて取りざたされる性格の問題ではないが、やはり1年のしめくくりとして総括的に診断し、その解消に努力…

例題主義の批判とその克服(3)

3. 一つの数理の発展段階では、演繹的方法が主役となる ここでも、まず実践例を紹介しよう。 先に紹介した6年生の“立体図形”の続きである。つぎの日、わたしは角すいをとりあげ、その頂点の数、面の数、辺の数について指導した。ところが、このとき子どもた…

例題主義の批判とその克服(2)

2. 新しい数理の導入段階では、機能的方法が主役となる まず、最初に実践例を紹介しておこう。6年生の“立体図形”を学習したときのものである。 わたしは、角柱の模型を見せながら、まずその頂点の数を調べさせた。 「三角柱の頂点の数は、いくつですか。」 …

例題主義の批判とその克服(1)

1. はじめに 数学といえば、演繹的な思考こそ、その本領であるという考え方がある。 けれども、小学校の子どもに、いきなり演繹的な思考を要求しても、これまた無理があることも常識となっている。そこで、従来からとられてきたのが、例題による説明である…

文章題指導における形式主義の克服(3)

5. 図や式は、必ずしも文章題解法の武器ではない 高学年になると文章題もむずかしくなり、いきなり答えを求めることはできないし、式さえ図や表をたよりにしなければな立てられないものが多くある。 しかし、低学年の文章題では、問題をよく読み、題意を正…

文章題指導における形式主義の克服(2)

3. 子どもの心に火をつけるために、まず、答えを聞こう 文章題のことを、一般に“問題”と呼んでいる。しかし、文章題を与えれば、それが直ちに“問題”として自覚されるかどうかは別問題である。 問題意識は、ある目的意識あるいは課題意識があって、その解決…

文章題指導における形式主義の克服(1)

1. はじめに “計算は得意だけど、文章題はにがてだ”という子どもが、かなりいる。 日数教が昭和51年9月に実施した“小学校児童の算数に対する意識調査”でも、算数科の学習内容の中で、文章題を嫌い・不得意とする子どもが最も多く、“文章題に対する児童の反…

教えたいことを 教えないで学ばせるには(9)

2. 暗算形式と筆算形式 暗算と筆算の関係も、こうした弁証法的な捉え方が必要です。ところが、暗算か筆算かということで二律背反的な論争が続けられています。 たしかに、83+48といった計算まで暗算形式で答えを求めさせることは、多くの子どもたちを…

教えたいことを 教えないで学ばせるには(8)

―その4 形式と内容― 1. 五・二進法の役割とその限界 一年生のくり上がりの計算をどう指導するかということで、“現代化算数指導法辞典”では“10の補数でやるものは、くり上がりの減加法にも一貫するし、9+2型など有利だが、これまでの5・2進法が生かせ…