算数の学びと指導ー市原式

唯物弁証法の視点から算数教育を見直した小学校教師の著作集

2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

教えたいことを 教えないで学ばせるには(7)

2. くり上がりの計算指導 わたしは、一年生のくり上がりの計算を、つぎのように指導しました。まず色画用紙で作った10個いりの卵パックに、画用紙で作った卵の形を9個貼ったのと、色画用紙のざるに画用紙の卵を2個、3個、4個、---と切り抜いて貼った…

教えたいことを 教えないで学ばせるには(6)

―その3 論理をどう導くかー 1. おしつけ授業とひきまわし授業 完成された数学が、極めて論理的な体系を具えていることから、算数の授業では、特に論理中心に子どもたちをひきまわす指導をよくみかけます。 第一のタイプは、子どもの思考を無視して教師の一…

教えたいことを 教えないで学ばせるには(5)

図形の概念もまったく同様です。「がようしの形をしらべてみましょう。かどは、どんな形でしょうか。」と言って一枚の画用紙について調べさせ、そこから直ちに「かどが、みんな直角になっている四角形を、長方形といいます。」と定義しても、それで長方形の…

教えたいことを 教えないで学ばせるには(4)

―その2 概念の形成― 1. 数学思想史から ピエル・プートルだったか“数学思想史”の中で、「出来上がった科学と、作られつつある科学とを区別しなければならない。」という意味のことを述べていたように記憶しています。 完成された数学と算数教育の違いも、…

教えたいことを 教えないで学ばせるには(3)

4. “整数÷小数”の指導 わたしは、何回か5年生を担任しました。5年生では、以前から、整数わる小数を指導することになっていました。わたしが、はじめて5年生を担任したときのことです。24÷4.8の計算は、下のように除数、被除数共に10倍して240÷…

教えたいことを 教えないで学ばせるには(2)

2. どのような素材をとりあげるか。 では、この減加法を“教えないで学ばせる”には、どのような素材をとりあげればよいのでしょうか。 それには、おかねを使うのがいちばんです。 おかねを使えば、13円もっていて9円のものを買うのに、3円を先に払ってか…

教えたいことを 教えないで学ばせるには(1)

ーその1 素材についてー 1. チューリップの授業 “教えたいことを教えないで学ばせる”には、その前提条件として、どのような素材をとりあげるかという問題があります。 ずいぶん、古い話ですが、わたしがかつてある小学校の校内研究会に招かれたときのこと…

教えたいことは 教えるな!(2)

2. 何年かすぎて それから何年かすぎて、わたしはまた一年生を担任することになりました。そして、同じ“たまいれ”の単元を指導することになりました。 算数の時間は、二時間目です。一時間目が終わると、わたしはつぎのように指示しました。 「二時間目は算…

教えたいことは 教えるな!(1)

―学習の焦点化と主体的学習― 1. "たまいれ”の学習 わたしが附属小学校で、一年生を担任していたときのことです。教生のA君が“たまいれ”という単元で、10以上の数の数え方と記数法を指導することになりました。子どもたちは、今日は“たまいれあそび”ができ…

算数教育に於ける教条主義の克服(5)

ここで<一般→特殊>方式による授業展開と<特殊→一般>方式による授業展開を比較検討してみよう。 わたしは、5年の(分数)÷(整数)を次のように二通りの方法で指導してみた。 [註] 水道方式では、(分数)÷(整数)は(分数)÷(分数)の退化した計算と…

算数教育に於ける教条主義の克服(4)

5. 発見学習では、<特殊→一般>方式の方がよい場合がある。 ここでも、まずわたしの実践を示そう。新しい指導要領では6年の教材となった対称図形の指導である。わたしは「線対称図形の対応する二点を結ぶ直線は、対称軸で垂直に二等分される」ということ…

算数教育に於ける教条主義の克服(3)

4. 一つの数理の発展段階では、演繹的な思考が主役となることがある。 ここでも、まずわたしの実践を紹介しよう。 先に紹介した6年生の“立体図形”の指導の続きである。 つぎの日、わたしは角すいをとりあげ、その頂点の数、面の数、辺の数について指導した…

算数教育に於ける教条主義の克服(2)

3. 新しい数理の導入段階では、帰納的方法が主役となる。 まず、わたしの実践を紹介しよう。6年の“立体図形”を学習したときのものである。 わたしは、角柱の模型を見せながら、まず、その頂点の数を調べさせた。 「三角柱の頂点の数は、いくつですか。」 …

算数教育に於ける教条主義の克服(1)

1. はじめに およそ、科学はありとあらゆる教条主義とは無縁である。数学も亦然り、集合論の創始者カントールも“数学の本質は、その自由性にあり”と述べている。たしかに数学は過去の既成概念を打ち破ることによって発達してきた。 算数教育も全く同じこと…

算数教育に於ける弁証法の問題(3)

3. 短除法と長除法 わり算の筆算形式に、短除法(A)と長除法(B)のあることは、少し年輩の教師であれば、みな知っている。ただし、短除法は除数が一位数の場合に限られた形式であり、長除法にはその制限がない。 最近の教科書では、いずれも最初から長除…

算数教育に於ける弁証法の問題(2)

2. 暗算と筆算 暗算と筆算の関係も、こうした弁証法的な捉え方が必要である。 たしかに、83+48といった計算まで筆算を導入しないで暗算で答えを求めさせた過去の計算指導は、多くの子どもたちを苦しめ、算数ぎらいを大量に生み出した原因の一つになっ…