算数の学びと指導ー市原式

唯物弁証法の視点から算数教育を見直した小学校教師の著作集

定着を確かにする練習の方法(4)

4. 全習法と分習法の効果的な使い分け

 学習心理学では、練習のはじめには、分習法が有利で、練習が進むと全習法が有利であると述べている。

 1年のくり上がるたしざんで、第1時は被加数が9の場合のみを扱い、第2時は被加数が8の場合、第3時は被加数が7と6と5の場合、第4時は、被加数が4以下の場合を扱い、最後にカードで総合的に練習させるといった指導は、その典型ともいえる。すなわち、分習法から全習法へとすすめている。

 しかし、分習法では、つぎのような点に留意する必要がある。

 例えば、2年の3位数同士の加法で、繰り上がりの計算を定着させるために、同じ型の問題ばかりを続けて練習していると、子どもたちは、1つ1つ判断することをやめて、機械的にどの位も繰り上げるようになり、②の計算まで、すべての位をくり上げて、685と答えを書く子どもがでてくる。

 したがって、こうした点を十分に考慮して、導入直後の練習では、理解の定着にねらいをおいて、同一タイプの練習問題は必要最小限にとどめ、そして分節の“れんしゅう”や単元の“まとめのれんしゅう”では、いくつかのタイプの問題をとりまぜて提出し、いわゆる全習法をとり入れるようにする。さらに“つみあげれんしゅう”などで、全習法を興味深く取り組ませるようにする。

 

(つづく)

 

(1980年代の掲載。掲載雑誌は不明。特集 認識と定着から)