算数の学びと指導ー市原式

唯物弁証法の視点から算数教育を見直した小学校教師の著作集

10までの加法・減法を どう指導するか(2)

3. 操作を通して数理を導き、映像に訴えて定着させる

 10までの加法を5を足場に分析することによって、論理的にはすっきりし、また、系統的に易から難へと指導することが可能になった。このことは、以上の説明で明らかになったと思う。しかし、このままではあまりにも論理が先行しすぎて、抽象的思考のにがてな1年生の子どもたちは、ソッポを向くであろう。しかし、わたしは、これを、活動に訴えてこの論理をひき出すことに成功した。

 6+2に例をとろう。

 わたしは、箱に入れた6個の桃と2個の桃を素材として取り上げた。そして、6個の桃を5個と1個に分けて1つの箱に入れ、2個の桃は別の箱に入れてみせた。子どもたちには、6個が5個と1個に分けられることを確認させ、2個の桃を6個の箱の方へ移してみせた。そして、1個と2個で3個になること、5個と3個を合わせて8個になることを把えさせた。すなわち、操作を通して6+2は、5+(1+2)=5+3という数理を導いたのである。

 6+4も、ドットを操作して5+(1+4)=5+5で10になるという数理を導いた。

 4+3に例をとろう。

 わたしは、パック入りの卵4個とお盆の上の卵3個を素材として取り上げた。卵パックは5個ずつ2列はいるようになっていて、5に対する補数を把えさせる上でも、5といくつという数の把え方をする上でも最適な素材だからである。

 子どもたちは、3個の中から1個とって4個と合わせて5個とし、さらに残りの2個をパックに移して7個になることを見つけた。すなわち、具体的な操作を通して4+3は(4+1)+2=5+2で7になるという数理に気づいた。

 4+2も、ドットを操作して、(4+1)+1=5+1という数理を導いた。

 このように、数理を抽象的に数の操作として導くのでなく、具体的な条件、卵パックという素材やドットの枠の中に入れるという条件のもとで具体的に操作させて導いたのである。

 しかし、定着させるためには、具体的操作を繰り返すだけでは、効果がない。その操作を念頭で行い、具体物から離れて計算できるようにしなければならない。そこで、数理を映像に訴えるくふうをした。わたしは、それをドット・カードで表した。ドット・カードを見れば4+3の算法が(4+1)+2となることは、一目でわかるからである。

(つづく)

 

(1970年代後半から1980年代。掲載雑誌は不明。「指導論説Ⅰ」より)