算数の学びと指導ー市原式

唯物弁証法の視点から算数教育を見直した小学校教師の著作集

学習に興味をもたせるには(2)

第2の条件 問題意識をもたせ、子どもたちの思考活動を大切にすること

 問題意識がなければ、学習に対する意欲も興味もわかない。したがって、如何に問題意識を持たせるかが極めて大切である。そして、子どもたちにおのずから考えさせるようにしむけることが大切である。

 一年生の指導に例を取ろう。わたしがある学校でとび入り授業したときの話である。その授業は、5の分解・合成のところであった。教科書には、銀紙でつつんだ棒チョコと茶色の紙でつつんだ棒チョコで、5の分解・合成が図示されていた。

 銀紙のチョコレート1と茶紙のチョコレート4

 銀紙のチョコレート2と茶紙のチョコレート3

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というように。わたしは、若しこれをはじめから教科書を見せ、5は1と4、2と3、3と2、4と1からできていることを教えようとしたら、とうてい子どもたちの興味は5分と続かないだろうと思った。それは、子どもたちに何の問題意識も持たせず、考えさせる余地がないからである。

 そこで、わたしは、この教材をつぎのようにとりあつかった。まず棒チョコの入っている箱<画用紙でつくったもの>をみせ、“この中に、こういう銀紙でつつんだ棒チョコ<これも画用紙でつくったもの>とこういう茶色の紙でつつんだ棒チョコが、みんなで5つ入っています。銀紙で包んだ棒チョコの数と茶色の紙で包んだ棒チョコが、みんなで5つ入っています。銀紙で包んだ棒チョコの数と茶色の紙で包んだ棒チョコの数をあててもらいましょう。”と問いかけた。子どもたちは“銀チョコが2つと茶色の棒チョコが3つです。”銀色が4つと茶色が1つだと思います。“と、つぎつぎと発表した。中には、”銀が3つと茶が3つ“というのもあった。子どもたちは”それはちがう“とか”ボクはこうだ“とか”わたしも同じです“とかいって大変興味をもって学習に参加した。わたしは時をみはからって、銀チョコの数3つだけを公開し、茶色のチョコの数をあてさせた。こうして何回かあってこさせ、5の合成、分解のあらゆる場合を示し、それを整理して終わった。子どもたちは5の合成、分解が1と4、2と3、3と2、4と1の4通りしかないことを理解した。

 ここに示した例は、一つの典型であるが、問題意識をもたせるためには、教材によってそれぞれ教師の工夫を必要とする。しかし基本的に言えることは、最も教えたいこと、言いかえれば、その教材でねらう内容については教師が教えないで、子どもにぶっつけることである。

 わたしはよく“教えたいことは教えないで子どもたちに問題にさせ、教えたくないことをその授業の中心的なねらいでないことは、子どもたちの問題にならないよう教えておくことが大切だ”と話しているが、このことは学習を焦点化させる上でも極めて大切である。

(つづく)

 

(1950から1961年頃の著作。掲載雑誌は不明)